土壌とブドウ畑の畑仕事がワインの基本
何といっても、ワインの原料となるブドウの品質・テロワールに大きく影響するのがブドウ畑です。
ワインの味わいのベースは品種によって形作られますが、そのブドウの生育にとって、産地の気候・土壌・その土の環境などの自然条件が大きく関わります。ブドウの生産者は、土壌を耕して肥料を加え、肥沃な土のもとに、ブドウの樹を育ています。
ブドウと生産者を悩ませるブドウ造りの厳しい現実
そうした作業の中で、ブドウに悪影響を与える、過度な気候の変化に対応し、時に病害虫などがつかないように農薬などを使います。こうした病害虫の発生や機械化された作業の効率のために樹木の下の雑草も除草剤で手っ取り早く処理してしまいます。
大量生産と広大なぶドブ畑を管理する上では効率化を図らなければなりません。
そのため、市場に多く出回っているワインの多くはこうした過程を経ています。
自然派オーガニックビオワインの土壌と畑仕事
しかし、オーガニックワイン、ビオワインと言われる自然派ワインについては、こうした工程での化成肥料や除草剤、農薬(ボルドー液は限定的に認められている)の使用を禁じています。減農薬農法は別ですが・・・。
また、フランスのシャンパンメーカーがブドウのウィルス耐性のある遺伝子組み換えのブドウを生育をしていたり、遺伝子組み換えのブドウや発酵用の酵母で造られたワインが登場するなどで話題となった遺伝子組み換え技術の使用も禁止しています。
さらに、果汁の色がより赤くなり、発酵が活発になるなどの目的で行われているブドウの実への放射線照射も禁じられています。
人の手と自然の力で造られるブドウの実
作業のほとんどが人の手による手作業です。畑の畝には下草を生やして、数ヶ月ごとに伸びすぎた雑草を刈り取っています。その他にも剪定や枝を取り除く作業・除葉・摘心・グリーン・ハーベストなども手作業です。
人工的なブドウ造りが生み出した弊害
ブドウは元来、痩せた大地に根を生やし、わずかな水と強い光で生育して実を着けます。
しかし、化成肥料をあたえる事で、ぶどうの育成にあわない地域でも栽培が可能になる、また収穫量が増えるために用いられます。
過度な化学肥料の栄養はブドウの樹に吸収されるだけでなく、下草の雑草にも行き渡り、結果、ブドウ畑が雑草だらけになるのです。
そして、その雑草を取り除くために除草剤を使います。こうした農薬によって、生態系のバランスは崩れていきます。捕食関係にある生物が死滅すると、逆にブドウ栽培にとって都合の悪い病害虫が繁殖、それに対処するために、再び農薬を使うという“負の連鎖”状態に陥ってしまいます。
こうした土壌では、枯れた草木などを分解し自然に肥沃な土をつくる微生物も減少し、結果として“痩せた畑”へと変わってしまうのです。
そして、またここでも、痩せた畑でブドウを育てるために化成肥料を使用せざるを得なくなるのです。
ブドウ畑に造られた恐るべき『死の壁』
田村安さん著の『オーガニック・ワインの本』(春秋社)によると、こうして化成肥料を長年使用してきたブドウ畑では“死の壁”なるものができていると言います。
あるセミナーでフランス料理上級学校教授のボワソー=デシュアール氏は『不作被害のブドウ畑をボーリング調査したところ、1メートルを越えたあたりから、化学肥料によって岩のように固まった土の層が数十センチあり、このためブドウの根がそれより下に張らないことが判明しました。根がその層にそって横に張ってしまっているため、ミネラルなど必要な成分が取れないのです。』と発言。
まさに地中に“死の壁”ができあがり、有機栽培をはじめようと化成肥料をやめた途端、ブドウが生育しないケース事がしばし報告されているというのです。
またボワソー=デュアル氏は『ワインの個性のためには土地の個性の違いが重要だが、1メートルしか深さのない土地では、その土地の個性はワインに現れない』とおっしゃっています。
ワインの味わいで最も重要な要素の一つであるテロワールが、損なわれている危険性があることを示しています。